『阿蘭陀』について 河善 河合知己 2022-02-01 UP

Q.阿蘭陀の魅力について教えてください。

阿蘭陀 最大の魅力は、この柔らかさでしょう。中国の染付磁器の写しを造ることを国からの至上命令として当時の陶工達が懸命に努力するもカオリン質の磁器の土が手に入らず失敗を重ね窯に身を投じた者までいたと言う話を聞いたことがあります。そんな中、江戸時代の初期に茶の湯が盛んになり、遠くオランダまで茶の湯の器を注文してしていました。鎖国時代にも唯一、オランダ東インド会社とは貿易があり大名 小堀遠州が深く係わり日本らしい絵付けの徳利や花入、遠州好みの茶碗や向付など魅力ある品物が多くあります。オランダの焼き物の土は柔らかく、悪く言ってしまえば粗雑な所もあるので、土と釉薬の収縮率の違いなどから薬が剥げて素地が見えている物も結構あります。しかし、この柔らかさこそがオランダ最大の魅力で、手の中に納めた時の暖かさは、硬い染付磁器の冷たさとは真逆のぬくもりを感じさせてくれて心を落ち着かせてくれます。 
Q.阿蘭陀には「デルフト」と会記等に記載されているものもありますが、阿蘭陀=デルフトなのでしょうか?何か違いや見分け方があれば教えてください。

A.会記では、「和蘭陀」、「紅毛」と記してあることもあります。茶席で阿蘭陀を『デルフトですね』と、仰る方がありますが間違っているわけではありません。 
 デルフトはオランダの都市の名前でアムステルダムの南、ロッテルダムの上に位置しています。ここで16世紀から盛んに焼き物が焼かれました。デルフトは画家のフェルメールなど芸術家が多くいて、絵付けをする者が数多くいたであろうことも要因のひとつだったかもしれませんね。デルフトにはたくさんの窯があり、各窯の窯印が高台内に入っています(入って無いものもあり)。ギリシャのA工場とか、薔薇工場とか…。詳しくは 根津美術館の阿蘭陀展の図録の最後に載っているんですが、この図録が現在手に入らずネットなどで高値が付いているようです。なので阿蘭陀をデルフトと言っても間違いではないですが地名であることを覚えていれば良いと思います。現在ではオランダ北部の都市、マッカムで焼き物が焼かれています。かれこれ25年以上前にオランダへ行ったことが懐かしく思い出します。あの時はアムステルダムの開いている骨董屋さんを全部回りました。しかし、買い物はありませんでした。なかなか自分の好みのものがなかったり、古いものもあったんですが値段が合わなかったり。『東京で買った方が安いよ!』とかね…蚤の市へ出かける時間がなかったので、またいつかリベンジしたいなと思います。写真の盃は高台にシリアルナンバーが入っていてヨーロッパからの里帰りの品です。

Q、阿蘭陀の名品を教えてください。

A.やはり、「たばこの葉」と言われる絵付けがある水指は昔から名声が高くて、我々の交換会で出てくることも稀にありますが高価で取引されています。大きさも太いもの、細いもの、その中間の物もあります。今ではデルフト以外で焼かれた可能性もあるようで、今後の研究待ちです。
阿蘭陀で作風が珍しいのは遠州所持「阿蘭陀半筒茶碗」です。上部に七宝繋ぎが書かれているので遠州の注文品に間違いないのですが、偶然なのか作為なのか絵付けが流れており、それが非常に素晴らしい景色となり、他に類がない大変見事な茶碗です。箱も遠州で「阿蘭陀」と書かれています。

最後に「阿蘭陀」は道具の取り合わせで用いる事により、異国情緒溢れる洒落た雰囲気が生まれ、茶席に広がりや奥行きを持たせることができます。大きさも様々なものがありますので、季節やお持ちの棚に合わせる楽しさもございます。「阿蘭陀」でお探しのものがございましたら、どうぞお気軽にお問合せくださいませ。

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