特別展
古伊賀 破格のやきもの 2023年10月21日(土)~2023年12月3日(日) 五島美術館
■概要 土・炎・人―巧まずして生まれた造形 「古伊賀」は桃山時代から江戸時代にかけて、今の三重県伊賀市で焼かれたやきものです。花生や水指などの茶陶(茶道具)を中心に焼造し、茶の湯において愛好されていました。大きく歪んだ形と、碧緑色の「ビードロ釉」、赤く焼きあがった「火 色」、灰色のゴツゴツした器肌の「焦げ」など、窯の中で偶然に生まれる景色が魅力です。 本展覧会では、古伊賀を代表する花生・水指の名品から、窯跡や消費地出土資料まで約90点を集めて展観します(会期中一部展示替あり)。「古伊賀」のみに焦点を絞った展覧会は初の試みとなります。 古伊賀の花生や水指には、成形した後にあえて歪みを加えたものが幾つも存在します。歪みの強い造形は桃山茶陶にみられる特徴ではありますが、中でも古伊賀では一見失敗作かと思われるほどに強くひしゃげた形やひび割れすらも見どころとされ、その迫力はまさに破格といえるでしょう。 正面と背面の表情が大きく異なる点も古伊賀の特徴です。これは炎に直面する側とその反対側とでは焼き上がりに差が出ることによるもので、片面に「ビードロ釉」や「焦げ」が広がり、もう片面に「火色」が現れたものが多くみられます。 古伊賀を焼造した窯は、上野城内窯跡・槇山西光寺窯跡・丸柱堂谷窯跡の三か所がありますが、本格的な発掘調査が実施されたのは槇山西光寺窯跡のみであり、伝世の名品がどこで焼造されたのか、今なお不明な点が残されています。 桃山茶陶として高い評価を受けているにもかかわらず、謎の多いやきものである「古伊賀」。本展はこれほどの点数の古伊賀作品が一堂に会するまたとない機会となります。時代の転換期が生み出した「破格の造形」をお楽しみください。 ■展示品のご紹介 ◎重要文化財 伊賀耳付水指 銘 破袋 陶器/一口 桃山〜江戸時代・17世紀 五島美術館蔵 胴の正面に大きな割れ目の入った堂々たる姿の水指。水を入れる器という水指の用途とは相反した造形が当時の息吹を伝えています。正面は若草色のビードロ釉が厚く掛かった上に窯の中の灰や土が付着し、背面は赤く焼き締まっています。歪みの強いこの姿は、桃山時代の武将茶人古田織部(1543~1615)が添えた「今後これほどのものはないと思う」という内容の手紙(関東大震災で焼失)の通り、見る者を圧倒するたぐいまれな存在感を有しています。伊賀藤堂家伝来の名品です。
◎伊賀耳付花生 銘 寿老人 陶器/一口 桃山〜江戸時代・17世紀 根津美術館蔵 筒形に伸びた頭部と大きく歪んだ胴、細い紐状の耳が特徴の花生。額の長い寿老人を連想して命銘されたのでしょうか。胴の上下には箆彫りが施されています。正面全体に掛かった透明感のある緑色のビードロ釉と、胴上部にかけて広がる灰色の焦げが、岩を流れる清水を想起させます。背面はあまり釉が掛からず、明るい褐色に焼き上がっており、壁に掛けて使用するための鐶が付いています。本作は松江藩主松平不昧(1751~1818)旧蔵と伝わっています。高橋箒庵(1861〜1937)の『大正名器鑑』出版に際し、昭和4年(1929)に開かれた慰労会において陳列された伊賀花生「東五人男」のうちの1点です。
◎伊賀耳付花生 銘 業平 陶器/一口 桃山〜江戸時代・17世紀 三井記念美術館蔵
◎伊賀耳付水指 銘 鬼の首 陶器/一口 桃山〜江戸時代・17世紀 石水博物館蔵
■ギャラリートーク等イベントの開催につきましては、当館ホームページにてお知らせします。 ■展示予定・作品名称は都合により変更となる場合がございます。 ■会期中一部展示替があります。また、当館には常設展示はございません。 ■館内整備のため休館=2023年12月4日[月]―12月12日[火] ■次回展示=[館蔵]茶道具取合せ展 2023年12月13日[水]―2024年2月12日[月・振] ■公益財団法人 五島美術館 〒158-8510 東京都世田谷区上野毛3-9-25 TEL050-5541-8600(ハローダイヤル)/03-3703-0661(テープ案内) ■五島美術館ホームページ=https://www.gotoh-museum.or.jp/