座談会 東山蒔絵錫縁香合 2023-11-01 UP



那須屋 野口明嗣さん(以下、野口):
箱には「東山蒔絵 香合」と書いてありますので、室町時代中期の錫縁香合を後の時代に写したものだと思います。東山文化(室町時代)の頃は蒔絵が盛んになり技術が上がり様々な表現方法が生まれました。蒔絵をしたものを東山蒔絵と呼んで昔から珍重していたと思います。波の蒔絵などとても丁寧で綺麗に描かれています。



壽泉堂美術 樫本昌大さん(以下、樫本):絵の中に字が入っているね。



野口:葦手(あしで)書き 散し書き と言うのですかね…。絵は波に千鳥の文様。

河善 河合知己さん(以下、河合):「代」と書いてある。ん…「君之代」だ!

野口:葦手書きの部分は、「志ほの」「佐之ての」「君之御代を」と読めることと、波に千鳥の蒔絵が描かれていることから、古今和歌集にある 「志保の山 さしでの磯に 住む千鳥 君が御代をは 八千代とぞなく」だと思います。
「しほの山のさしでの磯」に住む千鳥は、まさに、あなたの世を 「八千代」まで続くと鳴きます。といったところでしょうか。

樫本:お目出度い蒔絵ですね。

古角商店 古角博治さん:箱は?

野口:箱は東山蒔絵香合とだけ甲書きされているだけですが、中に高橋富兄(たかはしとみえ)が書いた葦手書きの考察の紙が入っています。高橋富兄は江戸から大正時代に石川で国文学者、歌人、教師をされていた方です。

河合:東山時代のものを恐らく江戸時代に写したと?



樫本:錫縁になっているんでしょ?

野口:はい、錫の置口をつけたいわゆる錫縁です。蒔絵の技法の他に、形(姿)などで時代があらわれると言われていますね。

齋藤紫紅洞 斎藤琢磨さん(以下、齋藤):”ぺったんこ”という表現は違うかもしれませんが、室町の時代と云われているような形ですね。



野口:そうですね。時代によって好みの形があると感じることがあります。江戸時代になると蓋が盛り上がっているような形になっていき、もっと”こんもり”した形の香合を多く拝見します。この香合は、蒔絵、香合の形、錫の状態などから、江戸時代に室町時代の香合を写して作られたものと思います。香合一つでも、蒔絵の技術や表現方法、時代ごとの形の好み、経年劣化ではなく経年美化とおっしゃる方もいらっしゃるみたいですが、時を越えたものにしか宿らない美しさを感じて頂きたく持ってまいりました。



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