玉鳳堂 備前伽藍香合 第3回
さて、信濃町の家屋・茶室の其の後なのでございますが、近代茶史に遺る様な茶事が催されながらも、戦争末期には、強制疎開によりとうとう取壊しとなってしまいました。戦時下のやむを得ない事情の中で、祖父達の胸中に思いを馳せます…。
しかしながら折々に催された茶事は、近代数寄者達の茶会記に其の様子を留めております。
近代数寄者のキーマンである高橋箒庵の『大正茶道記』。東京芸術大学学長を長く勤めた正木直彦の『十三松堂(じゅうさんしょうどう)茶会記』。魯堂の末弟で、優れた木工芸家であり、交流広い茶人でもありました仰木政斎の『雲中庵茶会記』。近代数寄者第四世代を代表する松永耳じ庵じ の『茶道春秋』。
其々に個性を放つ健筆を奮っており、様々申し伝えてくれます事は、後世の者として感謝に堪えません。
通常はあまり触れられる事のない茶道具商の小史ではございますが、日本文化の中の茶の湯の歴史において、隠れた部分を担っているのではないかと思われ、今回其の様な所に少しでも目を向けて頂けましたら幸いに存じます。
此の脱稿を致しました日は、以上にお話しました大正十四年の茶事の御正客に箒庵翁をお迎えしたと同日の十一月三日でした事にも、不思議な御縁を感じております。
殿様から山田家へと賜わりました不昧公遺愛の白椿獅子王を今年もそろそろ愛でる時期が参りました。
散るは浮き散らぬは沈む紅葉(もみじば)の 影は高雄の山川の水
不昧公の御歌と共に
玉鳳堂内 山田宗和拝
◆主要参考文献
①高橋箒庵著『大正茶道記』熊倉功夫・原田茂弘校注 淡交社 平成三年(1991)
②中間市教育委員会『仰木魯堂、御木政斎展』図録 平成31年(2019)
③福岡市美術館研究紀要『雲中庵茶会記翻刻稿』平成29年(2017)〜
【筆者紹介】山田宗和
東京生まれ。大学で芸術学、芸術史を学び、学芸員資格を得る。銀座和光美術部を経て、玉鳳堂現当主、山田高久に嫁ぐ。茶道教室を主催して現在二十一年。
▼玉鳳堂 備前伽藍香合 第1回
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