いまとなっては、如何ともしがたいことだが、茶道具だけで耳庵の真の茶を語ることができないことを申し添え、真実の耳庵の茶は彼の死を境として烏有に帰したといわなくてはなりますまい。それが茶の湯の宿命でもある。 (矢部良明 やべよしあき 元東京国立博物館工芸課長、元郡山氏立美術館長)