松平不昧公筆 一行書 「一超直入如来地」 2023-02-10 UP




写真右:壽泉堂美術 樫本昌大さん 写真左:古角商店 古角博治さん

壽泉堂美術 樫本昌大さん(以下、樫本):「一超直入如来地 迷いも悟りもひとっ飛び。ただちに如来の境地へ飛び込んでいく。坐禅とはジィーとしていて静かに見えるものであるが、実はこれほどダイナミックな行為はない。仏道を学ぶには語録を読んだり講義を聴いたりといろいろ道があるが、ただ坐禅さえしていれば、忽然として一跨ぎに仏の世界に到達するのである。(『茶席の禅語大辞典 有馬頼底著』より引用)」という意味です。

齋藤紫紅洞 齋藤琢磨さん(以下、齋藤):茶の美の品物で一行書は初めてかもしれませんね。初物として相応しい軸です。

古角商店 古角博治さん(以下、古角):茶室で見るとすごく良いですね。

樫本:筆に勢いを感じ、悟りの境地をめがけている力強い一行かと。恐らく不昧公にゆかりある方からの求めに応じて書いた作品ではないでしょうか。不昧は最初に遠州流や三齋流の茶に親しみ、18歳で正式に石州流茶道を学び、生涯にわたって禅学を修め茶禅一味の茶の湯を極めました。



河善 河合知己さん(以下、河合):不昧の字体はこんな感じのが多いですね。

樫本:そうですね。

河合:和歌の定家様の感じと、こうした一行の軸とでは字体がまた変わってきます。

樫本:癖があるんでしょうね…。

河合:箱はあるんでしょうか?

樫本:これは特に無いんです。二十年前位にお客様の蔵から出てきたもので、大菊の棗(三十の内)等の名品と一緒に出てきました。250年間 開けてなかった蔵でした。平成30年に「没後200年 松平不昧 -茶と人となり-」という展覧会が出雲文化伝承館で開催されました。これがその時の図録で、当店からも作品をお貸しいたしました。
 

齋藤:拝見、一行書も掲載されてます。おっ、この軸と全く同じ字体ですね。不昧は禅と深く関わりがありますから、こうして一行書が残っているのは必然でもありますね。

河合:現在、不昧公のお墓は東京の護国寺にあります。その前は神谷町の天徳寺にありました。天徳寺は、神谷町駅から国道一号を虎ノ門方面に進んで、愛宕神社の通りを右に曲がり、トンネルの手前を右に入ったところにあります。関東大震災後、国道一号の拡張工事が天徳寺境内に及んだため、お墓を出雲に移そうかという話になったところを、高橋箒庵が尽力しお墓を護国寺に移し、護国寺を東都茶の湯の大本山としました。壽泉堂美術さんは神谷町で天徳寺とご近所なので、この軸がここにあるのも何かのご縁かもしれませんね(笑)。天徳寺には、不昧さんとは別の松平家かもしれませんが今も松平家の墓はあったと思います。

樫本:商品についての詳細は下記URLをご覧ください。また、ご質問などあればお気軽にお問合せください。

▼松平不昧公筆 一行書 「一超直入如来地」
https://cha-no-bi.com/articles/view/498



▼座談会前半『回帰と展望』|茶の美一周年記念特別企画
https://cha-no-bi.com/posts/view/92
茶道具特別展 東京トートアンティーク
茶の美メールマガジン